1925年オランダ生まれ、1990年没。戦後のパリに渡り、サンジェルマン・デ・プレのボヘミアン・サブカルチャーに関与しながら撮影した写真集『左岸の恋』(1956年)で知られる。写真集・映像作品を通じた自己内包的なドキュメンタリーによって、戦後ヨーロッパのフォトブック史における主要な存在となった。
ファン・デル・エルスケンの写真は、若者文化・ボヘミア・旅・都市のサブカルチャー・親密さを主題とした自己内包的なドキュメンタリーを核としている。代表作『左岸の恋』(1956年)をはじめ、『バガラ』『ジャズ』『スウィートライフ』などの写真集群は、撮影対象の内側に深く入り込む「生きられたドキュメンタリー」の特質を示している*1*2*3。
形式的な特徴として、被写体への近接・粗さと生命力のある質感・書籍としてのシーケンシング・主観と出会いを可視化したままにするドキュメンタリー方法論が挙げられる*1*2。ファン・デル・エルスケンが写真と映像を選んだのは、出来事の背後に退くためではなく、出来事に入り込むためであった。その手法は接触・愛着・摩擦に依存しており、作品全体が「観察されたもの」ではなく「生きられたもの」として感じられる*1*2*3。
彼のキャリアは戦後ヨーロッパ写真・若者文化・旅、そしてフォトブックが主要な芸術形式として成熟していく過程に帰属する。戦後の都市と脱植民地化する世界が主要な舞台となった*1*2。同時代のストリート写真やドキュメンタリーとも重なるが、より自伝的・身体的に絡み合った実践は古典的なジャーナリズム的モデルとの差異を際立たせ、この差異こそが戦後写真史における彼の位置を決定している*1*2。体験的・書籍形式のナラティブへとドキュメンタリーを拡張した写真家として評価され、戦後ヨーロッパの主観的ドキュメンタリーを理解するうえで欠かせない存在である*1*2*3。