ビル・ブラント(Bill Brandt)は、イギリスの写真史を考えるうえで重要な写真家です。このページでは、関連作家や主要な作品を手がかりに、写真の座標の中での位置づけを、関連作家・出典とともに読み解きます。
ビル・ブラント(1904–1983)はイギリスの写真家。1930年代の社会記録から出発し、肖像・風景・ヌードへと活動を広げた*1。
初期の代表作《炭鉱夫の妻》や写真集「The English at Home」(1936年)・「A Night in London」(1938年)では、階級によって分断されたイギリス社会を強いトーン対比と演出的な構図で記録した。ジャロウへの帰路を急ぐ炭鉱夫を捉えた《Coal Searcher Going Home to Jarrow》(1937年)など、社会的事実を視覚的緊張として提示する手法が特徴である*2。後期には広角レンズを使った大胆な歪みによる裸体や風景の撮影へ移行し、記録から心理的・超現実的な形式表現へと踏み込んだ*1。
テートやMoMAをはじめとする機関は、社会記録期と後期の形式的急進化を同等に評価し、ブラントを20世紀イギリス写真の中心的人物として位置づけている。写真集を媒体として発表を重ねたことも彼の受容に重要な役割を果たした*1*2。