アンソニー・ゴイコレアAnthony Goicolea

アンソニー・ゴイコレア(1971年生まれ、キューバ系アメリカ人)は、1990年代後半から演出的写真タブローで広く認知されたアーティスト。一枚の画面に自分自身を複数役で登場させるデジタル合成により、青年期・アイデンティティ・欲望の撹乱的な劇場を作り上げる。

基本情報
生没年 1971–

経歴

1971年生まれのキューバ系アメリカ人アーティスト。写真、ドローイング、彫刻、映像、インスタレーションにわたって活動するが、1990年代後半から2000年代初頭にかけての演出的写真タブローによって広く認知された。大型カラー写真の言語の中でアイデンティティ・青年期・欲望を再考する実践により、現代写真史に位置づけられる。*1

表現解説

主要なテーマは、アイデンティティ、青年期、ホモエロティシズム、アンドロジニー、自己の二重化、ファンタジーである。精巧に演出されたタブロー、複数の役柄による自己肖像、デジタル後処理、一枚のフレーム内に繰り返す身体、磨き上げられつつも不気味な演劇性を特徴とする。初期の制服姿の少年たちによるタブローは実践の文法を確立しており、ゴイコレア自身が全ての人物として登場し、儀式・ぎこちない遊び・攻撃・性的緊張の場面を作り上げる。その場面は親しみやすいようでいて心理的にずれており、後期作品もこの方法を孤独な人物・移住・環境的不安へと拡張している。*2 インタビューによれば、ゴイコレアは写真的演出を選ぶのは、アイデンティティを安定した自己としてではなく役柄のアンサンブルとして扱えるからだとしている。全ての人物を自分自身が演じるという決断が歴史的に重要なのは、デジタル合成を技術的な目新しさではなく自己分裂の劇場として機能させる概念的装置に変えるからである。「私が最もインスピレーションを受けるのは、ものごとが変容を遂げるあの奇妙な過渡期や中間状態だ」というアーティスト自身の言葉が、青年期・曖昧性・不安定な変容への関心を端的に示す。*4 大型カラー写真・デジタル編集・アイデンティティを基盤とした美術が現代イメージ文化の中心となった1990年代末に登場した作家として、ポスト・シンディ・シャーマン的な演出写真の文脈に属しつつ、クィアな青年期・マスキュリニティ・無垢と越境の不穏な重なりへと議論を移動させた。*3

批評と受容

機関的な受容は一貫して、若さ・アンドロジニー・セクシュアリティ・無垢と越境の不穏な重なりを強調する。デジタル合成アーティストへの還元を避けて見るべきで、その重要性は、合成という技術が「誰が、いかに演出されて写真に映るか」という概念的問題と不可分になっている点にある。*2 写真的リアリズムが不可能な社会的場面を成立させながら、その説得力ある表面を手放さないことを示した作家として、写真が証拠からシナリオへと移行する歴史的転換に属する。*1

アンソニー・ゴイコレア 写真集

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外部リンク

出典