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PHOTOGRAPHERS/MARNIX GOOSSENS ·コンセプチュアルアート ·UPDATED 2026.08
MG
§ 141 — Photographer Index — コンセプチュアルアート

マーニクス・ホーセンス

Marnix Goossens
Country1980s / 1980年代 Period1980–1990s Channelイメージを疑う · CONCEPTUAL
Abstract

マーニクス・ホーセンスは、アルメレの植栽、壁紙の椰子、人工木目、窓辺、堤防や護岸を、テクニカルカメラによる精密なカラー写真で捉える。『Regarding Nature』『Deep Light』『Yonder』『Het wassende water』を通じ、オランダの自然が眺望より先に、都市計画、室内装飾、治水、遠方への欲望から形づくられる過程を検討した写真家である。

この写真家が変えたこと

ホーセンスは、壁紙を風景写真の中心に据え、そこから堤防までを一つの系列で扱った。『Regarding Nature』では干拓地アルメレに植えられた若木と庭、『Yonder』では椰子や森林を印刷した室内装飾、『Het wassende water』では水位を制御する堤防と護岸を撮る。三つのシリーズに共通するのは、自然そのものより、植える、印刷する、貼る、せき止めるという具体的な操作である。『Yonder』によって室内写真と風景写真が接続され、『Het wassende water』によって治水設備も同じ風景の問題に加わった。造成地の全景、部屋の壁、国土を守る構造物が、オランダで自然が作られる三つの場所として並ぶ。

Keywords Yonder Regarding Nature Deep Light 代理の自然 室内風景 人工景観 オランダ写真 大判カラー
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目次 · Table of Contents
§ 01 / 04 背景と時代

美術教育と、現存する場所を撮る方法

1967年にレーワルデンで生まれたホーセンスは、ユトレヒト芸術大学、アーネムのデ・アトリエス、アムステルダムのライクスアカデミーで学び、2000年に研修を終えた*21。アクゾノーベル美術財団は、自然、肖像、静物を横断しながら、人間の習慣や欲望が物と環境へ残す痕跡を追う仕事として紹介している*18。ライクスミュージアムは写真集と委嘱作を含む制作を所蔵記録へ登録し*4、UMCユトレヒトも、見過ごされやすい細部が画面の中で不意に強い存在感を持つ点を記している*14

作品群に一貫するのは、新しい場面を一から作るより、すでに使われている室内、植栽、日用品、堤防へカメラを向ける方法である。2003年のドキュメンタリーには、風景の中で一本の柳を慎重に撮る姿が記録され、作品は「写実的で、わずかにシュルレアリスムを帯びる」と紹介された*22。現存する場所を撮ると、壁紙の図柄だけでなく、住人の商品選択、建物の古さ、補修、光の入り方まで同じ画面に残る。ここで写る配置の作者は一人に定まらない。壁紙を選んだ住人、建物を設計・補修した人、植栽や堤防を管理する組織の判断が、現存する場所の細部として残る。

人工景観をめぐる1990年代以後のオランダ写真

オランダでは、干拓、堤防、道路、住宅地、植栽が国土の輪郭を日常的に作ってきた。1990年代以後の写真では、土地を手つかずの自然として眺めるより、計画、農業、観光、余暇、治水が重なる環境として捉える仕事が目立つ。展覧会図録『Nature as Artifice』は、この動向を新しいオランダ風景として整理している*16。ライデン大学の研究も、造成地の俯瞰、管理の痕跡の反復、日常の装飾への接近が同時期に現れた経緯を示す*11

ホーセンスは2000年、干拓地に建設されたアルメレの委嘱で、若い樹木、芝生、庭、装飾的な植物を撮影した。都市計画の全景を示す代わりに、住民が毎日見る高さと距離を選び、造成の思想を葉、支柱、樹木の間隔、土の表面へ具体化する。国土を設計する大きな計画と、庭を育てる個々の生活が、一枚のカラー写真の中で接する。

§ 02 / 04 表現の核心

『Yonder』― 室内に置かれた「向こう側」

『Yonder』で撮られるのは、荒廃した室内に貼られた南国の壁紙、ポスター、タイル、プラスチックの木目、窓から差し込む光である。Foamはこれらを「代理の自然」と呼び、閉塞した部屋の中に、別の場所への憧れが残されていると説明する*1。題名のyonderは、ここから離れた「あちら」を指す。写真の中の自然は、誰かが購入し、貼り、眺め、やがて放置した二次的な像として現れ、憧れと失敗、慰めと安価な装飾が一枚の表面に重なる。

『Yonder』で、実在する室内を撮る理由

『Yonder』で写真が必要になるのは、壁紙に印刷された山や森と、それが貼られた部屋の状態を切り離さずに残せるからである。Foamは、植物柄のタイルや粘着シートが遠方への願望を伝えると説明する*1。実在する室内を撮ることで、住人が選んだ図柄、部屋の狭さ、壁紙の継ぎ目、剥がれ、反射光が同時に写る。自然への憧れは作家が作った物語として提示されず、商品と建築を使って生活者が作った環境として現れる。

テクニカルカメラの準備には時間がかかる。その遅さによって、ホーセンスは壁面全体を見直し、図柄と支持体の双方へ焦点を合わせる。南国の景色だけを切り取ると装飾写真になるが、部屋の状態まで残すと、遠方への願望がどのような商品として購入され、どれほど長く使われたかが一枚の中で読める。高精細さによって、印刷された自然と、その像を支える生活環境が同じ精度で示される。

『Regarding Nature』― 新都市アルメレで自然を見る

『Regarding Nature』は、干拓地に建設されたアルメレの植栽、造成地、庭、室内装飾を扱う。ライデン大学の写真研究は、造成された都市の人工性が作品の背景に留まらず、どの風景を自然として受け入れるかという主題を支えると論じた*11。図録『Nature as Artifice』は、ピンクの花や芝生など人為的な自然を、批判の図解へ整えるより、軽いユーモアと驚きを伴う像として撮った点を指摘する*16。計画都市の自然は偽物として切り捨てられず、住民が生活を始めるために育て、飾り、意味を与える未完成の環境として現れる。 Rijksmuseumの書誌は、このシリーズがアルメレの自然を主題とする刊行物として制作されたことを確認できる*5

窓、反射、光―『Deep Light』の境界面

『Deep Light』では、窓やガラス、反射光が、室内と外部をつなぐ境界として反復される。Van Abbemuseumの図書館記録は、『Deep Light』を作品集・展覧会資料の流通の中に位置づけている*12。Huis Marseilleは、ホーセンスが親密な内部と公共的な外部を行き来し、自然を客観的に分類するより、個人的に色づけされた見方を提示すると説明している*2。窓は風景を開く装置である一方、反射によって見る側の部屋を重ね、外部への視線が常に現在の生活環境を通過することを示す。

§ 03 / 04 代表作・方法・媒体

《Catch》と、静物が生む知覚の遅延

《Catch, 2012》では、身近な物と光の配置が、意味をすぐに決められない静物へ整えられている。Foamの作品ページは、この写真を作家の細部観察と構成感覚を確認できる一点として公開する*6。ホーセンスの静物は、象徴を読み解かせる古典的なヴァニタスより、何を見ているのかを一拍遅らせる。対象の用途や大きさを知っているはずなのに、画面内の色、質感、光の関係が先に立ち、日用品がまだ名前のない視覚物へ戻る。

『Yonder』という写真集の編集

『Yonder』は七年間にわたる撮影を、壁紙、窓、人工素材、光の反復によって編集した写真集である。ローマ・パブリケーションズは、室内にある自然の代用品を、自由、独立、自然への憧れを映す要素として説明し、マリア・バルナスのテキストを含む132ページの刊行物として記録している*17。ページを進むたびに別の部屋へ入るが、南国や森林の像は紙やプラスチックの表面に留まる。写真集の連続は、遠方への欲望が場所を変えて反復される構造を作り、個々の奇妙な室内を一冊の心理地理へ結ぶ。

「Rising Waters」― 穏やかな画面に残る治水の緊張

Rijksmuseumの委嘱でホーセンスは、堤防、砂丘、護岸、波、水辺の生活を撮影した。同館の刊行物『Het wassende water』は、堤防、砂丘、波を一つのシリーズとして編集し、オランダの水管理を視覚化する*19。災害の瞬間を劇的に演出せず、水を遠ざける設備、平坦な地形、日常の利用を静かなカラー写真へ収めるため、国土の安全が反復的な設計と保守に依存する事実が画面の奥に残る。室内の壁紙と治水設備は規模こそ異なるが、望ましい環境を人工的に保つ装置として連続する。 Huis Marseilleは、水管理によって成立する国土と、静かな写真に潜む水位上昇の脅威を同じ展示文脈で扱った*3

《Cowboy Couple》《Cloud》《Silver》― 自然像から人工物へ

Stedelijk Museum所蔵の《Cowboy Couple》は、人物像と室内の演出が、日常に入り込んだ役割やイメージの借用を示す*7。《Cloud》では空の現象が物や印刷物に置き換わり、自然の像が持ち運べる表面になる*8。《Silver》はサンダース・コレクションを通じてStedelijkの文脈へ入り、物質の反射と写真の表面を重ねる作品として記録されている*13。これらは主題が植物や風景に限定されず、写真が既製のイメージと現実の物質をどう区別するかを継続的に問うことを示す。

§ 04 / 04 批評と受容

『Nature as Artifice』と、人工景観を撮った同時代

ライデン大学の研究は、1980年代以後のオランダで、人が造成し管理する土地を扱う風景写真が増え、2008年の『Nature as Artifice』に十九のプロジェクトが集められた経緯を整理している*11。同じ論考には、アマチュア・サッカー場の背景を撮ったハンス・ファン・デル・メール、建設地と余暇の人工性を扱ったバス・プリンセン、同じ公園を一年間定点撮影したエルウィン・ドリーセン、マリア・フェルスタッペン、過剰に管理される土地を追ったヘルト・ヤン・コッケンと並んで、『Regarding Nature』が紹介される*11。ホーセンスは造成地の全体像や制度の図解へ向かわず、若木の反復、花の平面的な配置、壁紙の継ぎ目といった装飾の水準へ人工景観を近づけた。 Apertureの巡回展資料は、この動向を国土紹介の枠を越え、自然、建築、計画、表象が重なる新しいオランダ風景として提示した*10

現実にある演出と、撮影時の判断を分けて見る

Huis Marseilleは、ホーセンスが視点とフレームの選択によって、日常に潜む奇妙さを引き出す作家だと説明する*2。大規模なセットを組めば、不穏な配置は写真家の発明として理解される。既存の室内や日用品を使うと、飾り方、清潔さ、補修、商品の組み合わせが生活の演出として現れる。2011年の『Still/Life』を扱った『ウォール・ストリート・ジャーナル』は、椅子に置かれたスイカを写す《Melon》を、日用品の配置と色が不穏さを生む例として取り上げた*20。2018年の国際スティルライフ展でも、日用品の現実感を写真で考え直す作家として紹介された*15。慎重な構図は、日常の側で続いている演出と、撮影時に加わった判断を見分けられる程度に保つ。

アルメレ、室内、堤防を三つの人工環境として見る

『Regarding Nature』では、造成都市アルメレの若木や庭が、将来の緑を先取りする景観として写る。『Yonder』では、生活者が購入した遠方の風景が壁紙として室内に残る。『Het wassende water』では、堤防と護岸が海面より低い国土を日常的に守る。ステデリック美術館の現代オランダ写真展は、ホーセンスの作品を同国の写真コレクションと写真集文化の双方から紹介した*9

三つのシリーズを並べると、同じ「人工自然」でも、その担い手と規模が異なることが分かる。アルメレでは都市計画と住民の庭仕事、室内では商品産業と個人の選択、堤防では行政と土木技術が風景を作る。ホーセンスは壮大な全景を避け、若木の支柱、壁紙の継ぎ目、護岸の接合部へ近づく。制度を抽象語で説明する代わりに、実際に施工され、使われ、維持される場所として見せることが、この撮影距離の役割である。

§ REL 関連する写真家・運動
Photographers
  • 安村崇 ― 家庭内の日用品を、写真の焦点と配置によって模型のように見せる。ホーセンスと同じく、日常に既にある演出を拾い出す。
  • エルスペス・ディーデリクス ― 自然と人工物を色彩と構成で接続し、Huis Marseilleでホーセンスと二人展を行った。
  • サンナ・カンニスト ― 植物をスタジオへ持ち込み、自然観察と構成写真の境界を扱う比較対象。
Movements / Contexts
  • カラー写真 ― 壁紙・プラスチック木目など室内の代替的自然を高精細カラーで撮り、風景への欲望が日常に潜む様を観照的に提示した。
  • スティルライフ ― 日用品や装飾を、用途から切り離された視覚構造として見せる。
  • ポストドキュメンタリー ― 既存の場所を記録しながら、フレーミングと編集が現実の意味を作ることを前景化する。
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