1960年サイゴン生まれ、ベトナム系アメリカ人。《Small Wars》《29 Palms》など戦争の再演・軍事訓練・景観を大判カメラで記録した連作群で知られる。戦場ではなく戦争が日常・制度・風景に浸透する様相を写真の中心に据えた現代写真の重要な作家。
1960年サイゴン(現ホーチミン市)生まれ。ベトナム戦争終結後にアメリカへ移住し、スタンフォード大学で学んだのちニューヨークを拠点に活動している。1994〜98年にかけて帰還したベトナムを記録した《Viêt Nam》シリーズで注目され、以降《Small Wars》(南北戦争の再演)、《29 Palms》(海軍陸戦隊の訓練)などを発表した*3。
レーの写真の核心は、戦争をひとつの壊滅的な出来事としてではなく、訓練場・地形・制度・日常生活を通じて遍在する条件として捉える姿勢にある。大判カメラを用いた写真は、軍事的な場面を風景のような静かな観察へと変換し、緊張と凡庸さを同一フレームに共存させる*1。
MoMAの大規模サーヴェイは、レーの複数の連作を長期的な探求——紛争・詩的想像力・歴史的記憶をめぐる——の軌跡として提示しており*1、この枠組みは彼女の仕事を単なる戦争写真ではなく、移民・ディアスポラ・国家の暴力という複合的な問いを写真で追うものとして受容する根拠になっている。
1854フォトグラフィーのインタビューでレーは、紛争を「下敷き」として捉えており、そこから異なる実験が分岐しうると語っている*2。この言葉は、戦争が彼女の作品において単なる主題ではなく、写真的思考の基盤として機能していることを示す。
MoMAと1854フォトグラフィーをはじめとする受容は、レーを戦争の現代的な残滓を最も批評的かつ詩的に追った写真家のひとりとして位置づけている。自伝・ランドスケープ・軍事的制度を横断する彼女の実践は、写真が戦争に関与する方法を拡張した*1。