1958年ドイツ、モアース生まれ。生物学者として訓練を受けた後、1980年代末から写真へと転向した。動植物・生物の痕跡・知覚現象を手焼き白黒写真と連作の構造によって探求し、科学的観察と詩的注意を交差させる独自の実践で知られる。
1958年ドイツ、モアース生まれ、ハンブルク在住。大学で生物学を専攻し、実験映画の制作を経て1980年代末に写真へと転向した。動物・植物・昆虫・菌類・知覚現象などを手焼きの白黒写真で記録し、連作・書物・展示の構造によって意味を組み上げる実践を続けている。シンシナティ美術館・MACSなどで大規模な個展を行っている*1。
レンペルトの写真の特徴は、35mmカメラによる直接的な記録、暗室での手焼きプリント、額装せずに壁に直接設置するインスタレーション方式、そして複数の写真が関係的に意味を形成する連作の構造にある。MACSの発表資料でレンペルト自身は「何かが出現するためには複数の写真が必要になる。しかし時に、一枚で足りる」と語っており*2、この言葉は彼の連作への姿勢を端的に示す。
生物学の訓練は、彼の写真に科学的な精度をもたらすと同時に、分類・類比・視覚的比較がアートの場に入り込んだとき何が起きるかを問い返す視点を与えている。シンシナティ美術館は《Field Guide》について、科学的厳密さと詩的感受性の双方を強調しており*1、この枠組みはレンペルトが自然史的図像とも純粋な形式的コンセプチュアリズムとも一線を画していることを説明する。
デュッセルドルフ/ベッヒャー派が写真の制度的存在感を拡大した後のドイツ現代写真において、レンペルトは記念碑性や壮観さとは反対の方向——小さな注意・痕跡・分類学的不確かさ——へと向かった。この選択は、写真的知識が何であり得るかの再検討として受容されている*3。
シンシナティ美術館・MACSをはじめとする受容は、レンペルトを生物学とアートの二重の素地をもつ特異な実践者として一貫して位置づけている。科学的知識の生産と芸術的注意の間にある緊張を写真の連作によって可視化してきた点で、現代のネイチャー写真を再定義した作家として評価される*1。