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PHOTOGRAPHERS/ANDRÉ KERTÉSZ · ストリート写真
AK
§ 068 — Photographer Index — ストリート写真

アンドレ・ケルテス

André Kertész 1894–1985
Countryハンガリー Period1910–1920s Channel都市と瞬間 · STREET
Abstract

ハンガリーからパリ、ニューヨークへと移動しながら、都市の日常と偶然の配置に私的な詩情を見いだした写真家。後のストリート写真や詩的ドキュメンタリーの形成に深く影響した作家として評価される。

この写真家が変えたこと

ケルテスは、都市の日常と偶然の配置のなかに私的な詩情を見いだし、報道でも様式的な構成でもない個人的なまなざしを写真の主題に据えた。移動を重ねながら築いたその視線は、後のストリート写真や詩的ドキュメンタリーが個人の感受性を写真の主題とする道を準備した。

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目次 · Table of Contents
§ 01 / 03 背景と時代

アンドレ・ケルテスは1894年にブダペストで生まれ、若い頃から写真を独学で始めた。*1 第一次世界大戦への従軍中にも写真を続け、戦後のブダペストで写真活動を本格化させた。1925年にパリへ移り、写真記者として登録するとともに、近代美術と写真が交差する環境の中で活動を展開した。*2

パリではモンパルナスの芸術家たちのポートレートを撮影し、雑誌に写真を発表しながら、《Satiric Dancer》《Meudon》など後に代表作として評価される作品を撮影した。*3 1936年にニューヨークへ移ったが、商業雑誌のシステムの中で彼の写真観はすぐには理解されず、作家としての評価は時間をかけて定着した。*4 1960年代以降に再評価が進み、1964年のMoMAでの個展が重要な転機の一つとなった。*5 1985年にニューヨークで没した後も、ゲティ美術館、ICP、NGA、メトロポリタン美術館など主要機関が彼の写真を所蔵している。*6

§ 02 / 03 表現の核心

日常の端と偶然の配置

ケルテスの写真は、大事件を報告するよりも、日常の端にある偶然の配置を見つけることで成立する。*7 街路、窓、影、階段、室内の小物は、見る角度と時間によって静かな緊張を持つ。彼の方法は、後のストリート写真のような即時性を含むが、攻撃的なスナップではなく、私的な感覚が外界の構図と重なる瞬間を探すものであった。ICPの展覧会資料は、このアプローチをパリ時代の雑誌・ギャラリー文化の中で培われたものとして記録している。*8

《Satiric Dancer》(1926年)では、逆光と床上の反射が合わさり、身体が抽象的な形へと変換される。単なる人物スナップではなく、光と形の偶然の一致が写真を成立させている。《Meudon》(1928年)では、橋の上を歩く人物と遠景の列車、空に浮かぶ塔のような形が、一枚の中で別々の距離感と時間を共存させる。*9

パリ時代の文脈と移動

パリ時代のケルテスは、雑誌、画廊、移民芸術家のネットワークの中で、写真が報道と芸術のあいだを移動する時代に活動した。*10 ゲティ美術館の「ケルテス:七十年の写真」展資料は、彼が近代美術への意識を持ちながら日常的な視覚を詩的に組織した過程を、年代別に整理している。*11 ニューヨーク移住後は商業雑誌の環境の中で評価が遅れたが、移動と受容のずれも彼の仕事の重要な文脈として後の写真史研究に位置づけられている。*12

ストリート写真の先駆としての評価

ケルテスはしばしば「決定的瞬間」の先駆者として語られるが、この単純化には注意が必要である。*13 ブレッソン以前の彼の写真が時間の感覚において重要であることは確かだが、彼の写真の核は世界を支配的に捕まえることではなく、偶然の配置に私的な感情を宿らせる点にある。MoMAのプレス資料(1964年)は、ケルテスを若い写真家に強い影響を与えた作家として再配置した文書として重要である。*14 ICPの展覧会記録も、彼のパリ時代から後期のニューヨーク作品まで、ストリート写真・詩的ドキュメンタリー・亡命的視線という複数の文脈で評価している。*15

§ 03 / 03 批評と写真史上の位置

ゲティ美術館、MoMA、ICP、NGA、AIC、センター・ポンピドゥーなど主要機関がケルテスの作品を所蔵し、近代写真における詩的ドキュメンタリーの形成に大きく貢献した作家として評価されている。*16 ジュ・ド・ポームやSFMOMA、MFAボストンも関連作品を所蔵している。*17 写真史上は、近代都市の詩情、雑誌文化、移民的視線、私的ドキュメンタリーの交点に置くと、彼の作品の固有性が見えやすい。ハンガリー生まれの移民として複数の国・言語・文化の間を生きたことが、彼の視線の独自性と切り離せない。*18 ケルテスの再評価は1960年代のMoMA展以降に本格化し、ストリート写真や詩的ドキュメンタリーの先駆として位置づける動きが強まった。ブレッソン以前の「詩的なスナップ」の系譜を理解するうえで、ケルテスは現在も写真史教育において欠かせない参照点である。

§ REL 関連する写真家・運動
関連する写真家
  • アンリ・カルティエ=ブレッソン ― 「決定的瞬間」の先駆としてケルテスが位置づけられることが多く、日常の時間的な緊張を写真で捉える方法の先行例として比較される。
  • マン・レイ ― 1920〜30年代パリで前衛芸術と写真が交差する環境を共有した同時代の作家。
  • ジェルメーヌ・クリュル ― パリを拠点に報道・前衛・出版の間を移動した同時代の写真家として、移民的視線と国際的な活動を共有する。
  • ポール・ストランド ― 日常の偶然の構成から写真の形式的価値を引き出すという方向において、ストランドのモダニズム写真と比較される。
関連する運動
  • ストリート写真 ― 日常の端にある偶然の配置を私的な感覚として捉える方法は、後のストリート写真の先駆として位置づけられる。
  • モダニズム ― 1920〜30年代パリで近代都市の詩情を写真で組織した実践として、モダニズム写真の詩的ドキュメンタリーの系譜に位置する。
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