ルイ・ダゲール(Louis Daguerre)は、発明・技術を考えるうえで欠かせない写真家です。このページでは、発明・技術を手がかりに、写真史の流れの中での位置づけを、関連作家・運動・出典とあわせてたどります。
ダゲールはパリで大型ジオラマ劇場を経営する舞台演出家だった。ジオラマは透過光と反射光を切り替えて風景画を昼から夜へと変化させる視覚装置であり、光と像の定着への強い関心をもたらした*1。1826年頃から発明家ニエプスと共同研究を開始し、ニエプスの死後(1833年)も銀板に水銀蒸気で像を定着させる方法を独自に改良し続けた。1839年1月7日、フランス科学アカデミーでダゲレオタイプが公開され、同年8月19日にフランス政府が製法を「全人類への贈り物」として(イギリスを除く全世界で)無償公開した*2。この公開により技術は急速に普及したが、各ダゲレオタイプは複製不可能な一点物だった。代表作「ボールヴァール・デュ・タンプル」(c.1838)はパリの大通りを写したもので、長時間露光のため動く馬車・歩行者は写らず、靴磨きをされながら静止していた男性のみが写り込んだ——これが「写真に初めて写った人間」とされる*1。同年3月8日の研究室火災でほとんどの記録が失われ、現存確認済みの作品は25点未満に留まる*2。