ラシード・ジョンソン(1977年シカゴ生まれ)は、ヴァン・ダイク・ブラウン印画などの歴史的写真プロセスと演出的なポートレートを通じ、黒人のアイデンティティ・二重意識・表象の政治を問うアメリカのアーティスト。スタジオ美術館ハーレム「Freestyle」(2001年)に参加しポストブラック芸術の文脈で登場した。
1977年シカゴ生まれのアメリカのアーティスト。コロンビア・カレッジ・シカゴで写真を専攻し、シカゴ美術館附属学校でも学んだ。初期の写真連作「Seeing in the Dark」「The New Negro Escapist Social and Athletic Club」がその出発点となる。スタジオ美術館ハーレムの「Freestyle」(2001年)への参加を機に注目を集め、MCAシカゴでの初の主要個展「Message to Our Folks」(2012年)は活動初期14年を回顧した。作品はメトロポリタン美術館・ナショナル・ギャラリー(ワシントンDC)・スミソニアン協会などに収蔵されている。*2
主要なテーマは、黒人のアイデンティティ、文化的記憶、二重意識、アフロセントリックなオブジェクト、美術史、階級、男性性、不安、そして公的・私的な自己の構築である。初期の写真ではヴァン・ダイク・ブラウン印画などの歴史的プロセスと演出的なポートレートを使用。「Seeing in the Dark」ではシカゴでホームレス状態にある黒人男性を19世紀の写真プロセスで撮影し、現代の被写体と写真的ポートレートおよび人種的表象の歴史を結びつけた。*5 「The New Negro Escapist Social and Athletic Club」では架空の黒人知識人の秘密結社を構築し、時代的なスタイリング・二重化された人物・フォーマルなポーズ・黒人の歴史と理論を参照するタイトルを用いた。写真的歴史主義と演出的フィクションを使うことで、ジョンソンは表象の負荷を批評する——透明なドキュメンタリーイメージを提供するのではなく、アイデンティティが歴史・アーカイブ・階級への上昇・パフォーマンス・コード化された素材によって媒介されることを示す。*4 スタジオ美術館ハーレムの「Freestyle」(2001年)との関連で、21世紀初頭に黒人の可視性の政治を複雑化させた点に歴史的意義がある。*2
MCAシカゴは「Message to Our Folks」でジョンソンの日常的な素材の使い方を「ドメスティックなものをハイジャックする」過程として説明する。ボードイン大学の「Larry」オブジェクトテキストは「Seeing in the Dark」をシェリー・ライスの「写真を社会的な場」として読む解釈と結びつける。人種的アイデンティティをドキュメンタリー的証拠によって安定化できるという考えへの挑戦——ジョンソンのポートレートは黒人主観性が歴史・フィクション・視覚的コードを通じて形成されることを示す意図的なパフォーマンスである——が批評的な核心となっている。*5