ヴァレリー・ベラン(1964年フランス生まれ)は、ポートレート・スティルライフ・ボディ・商品など多様な被写体を通じて、超精細な描写と人工性の間の不安定な関係を探る写真家。記述の正確さをそれ自体として追求することで、被写体の存在論的地位を宙吊りにする。
1964年フランス生まれ。ポートレート・スティルライフ・ボディ・マネキン・花・デジタル操作を組み合わせた写真実践で知られるアーティスト。写真がポスト・フォトグラフィック的・デジタル的な領域へ移行しつつあった時代に、ポートレートやスティルライフというより古典的なジャンルの内側からその問いを立てた点で独自の位置を占める。*1
主要なテーマは、外見、人工性、身体の物体性、高級品、大量生産された表面、現実と作り物の間の不安定な境界である。正面的でしばしば連作的な提示、強烈な表面の細部描写、強い調子・色彩的制御、身体と物体を同等のイメージ物として扱う手法が特徴である。*2 代表作は『Bodybuilders』『Black Eyed Susan』、『Reflection』シリーズで、ドキュメンタリー的に見える正面描写から被写体・物体・シミュラクルが重なり合う不安定なイメージへの移行を示す。ベラン自身は「ストレート写真の精神で、ありのままに撮影することを目指してきた」と語るが、その見かけの直接性は戦略的なものであり、描写を不気味さの手前まで押し上げることで現実がすでにいかに美化・商品化されているかを問う。*1 V&Aのための『Reflection』シリーズなど後期の作品はデジタル操作とファッション・商業展示との対話を強め、アナログ期からデジタル期への連続性を示す。*4
ベランはストレート写真と幻想の緊張を軸に受容されており、リアリストとしてもデジタル・ファンタジストとしても単純に還元されない位置に置かれている。批評的に最も強い軸は、写真が同時に誘惑的かつ疑わしいものとして機能する点にある。描写の鋭さが増すほど被写体の存在論的地位が不確かになるというこの逆説が、ポスト写真・商品の美学化をめぐる議論における彼女の重要性の核心である。*2