アンドレアス・グルスキーAndreas Gursky

アンドレアス・グルスキー(Andreas Gursky)は、デュッセルドルフ派と大判カラー写真を考えるうえで欠かせない写真家です。このページでは、デュッセルドルフ派と大判カラー写真を手がかりに、写真史の流れの中での位置づけを、関連作家・運動・出典とあわせてたどります。

基本情報
ドイツ
生没年 1955–

解説

1955年ライプツィヒ生まれのグルスキーは、写真家の父・祖父のもとで育ち、フォルクヴァング芸術大学でオットー・シュタイネルトに学んだ後、デュッセルドルフ芸術アカデミーでベルント・ベッヒャーに師事した*1。師の「タイポロジー的記録」という方法論を継承しながら、対象を資本主義のグローバルな空間——証券取引所・物流倉庫・スタジアム——へと転じ、高所から大判カメラで撮影した複数カットをデジタル合成することで「人間の目では捉えられない全体像」を構築する手法を確立した*2。1999年の「ライン川(ライン IIシリーズ)」は河川両岸の堤防を幾何学的に整理した極度に抽象化された横断面で、2011年にクリスティーズのオークションで約433万ドルで落札されて当時の写真作品史上最高額を記録した*1。グルスキーの大型プリント(通常150×300センチ超)が示す「無数の反復に溶け込む個人」という構図は、グローバル化した経済システムの均質性と人間の無力さを視覚化するものとして批評家から繰り返し引用されてきた*3。ベッヒャーの弟子仲間であるトーマス・シュトゥルート・トーマス・ルフらとともに「デュッセルドルフ派」と呼ばれ、2001年のMoMA個展をはじめ主要美術館での展覧会を重ね、MoMA・テート・グッゲンハイムが作品を収蔵する*1。デュッセルドルフ芸術アカデミーの教授を長年務め、ドイツ写真研究所の設立にも関与した*2。1999年の「99セント」はアメリカのスーパーマーケットの棚を高密度に捉えた作品で、消費社会の過剰さを「ライン川」と並ぶ代表作として広く知られる*2。グルスキーがファインアートとしての写真の市場価値を飛躍的に高めた背景には複数の要因が連動している。第一に、150×300センチを超える巨大プリントが白壁のギャラリーで絵画と競う物理的存在感を実現し、「写真でも一室を支配できる」ことをコレクターに証明した。第二に、一作品あたりの版数を通常6部以下に制限することで希少性の論理を写真市場に持ち込み、版画・彫刻と同じ原則でコレクション価値を生み出した。第三に、ロスコの色面抽象を想起させる「99セント」の構成やミニマリズムと共鳴する「ライン川」の水平構造が、写真を絵画と同じ批評的語彙で論じる根拠を与え、コレクターに「写真を買う」ではなく「コンセプチュアル・アートを買う」という認識を生んだ。元MoMAキュレーターのピーター・ガラッシは「現代アートへの独自かつ挑戦的な貢献」と評し、2001年のMoMA個展が機関としての最高の承認を付与した*2。ベッヒャー夫妻から継承したコンセプチュアルアートとしての系譜が、主要オークションハウスで写真を絵画・彫刻と同列に扱わせる先例を確立し、現代フォトグラフィー・コレクター市場の形成に決定的な役割を果たした*3

アンドレアス・グルスキー 写真集

Andreas Gursky
大判カラーとグローバル資本主義の視覚。
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外部リンク

出典