志賀理江子(1980年愛知生まれ)は、宮城県北釜に長期滞在し地域住民と協働で撮影を続けた写真家。2011年の東日本大震災で拠点と多くの住民を失いながら活動を継続した「螺旋海岸」は、コミュニティの記憶・喪失・神話的時間を演出・フラッシュ・アーカイブ回収を通じて可視化する。
1980年愛知県岡崎市生まれ、宮城県在住。主要プロジェクト「螺旋海岸(RASEN KAIGAN)」は仙台近郊の沿岸集落・北釜を舞台とし、2011年の東日本大震災・津波の前後にわたって展開された。MoMAの「Ocean of Images: New Photography 2015」参加、同館に「螺旋海岸」シリーズの複数作品が収蔵されている。*1
主要なテーマは、共同体の記憶、災害、口承、地域の祭礼、写真的時間の不安定性、喪、神話、そしてアーカイブと生きられた場所の関係である。演出・協働・フラッシュ照明が施された超現実的ないし演劇的なイメージが、北釜の具体的な人物・場所・出来事に根ざした形で組み合わされる手法が特徴である。*2 2008年から北釜に移住して地域住民・地元カメラマンと協働で撮影を重ねていた志賀は、津波で自宅とスタジオを失い多くの住民を亡くした後も活動を継続し、瓦礫から発見された匿名の写真を清掃・デジタル化する作業にも取り組んだ。「螺旋海岸」という言葉が「過去・現在・未来がない」という時間の渦を意味することは、志賀自身の言葉として記録されている。*3 震災後の日本写真においてドキュメンタリー報道への還元を拒み、演出・パフォーマンス・アーカイブ回収・神話的イメージを結びつけて断裂した地域史に応答した点に歴史的意義がある。*2
SFMOMAは「螺旋海岸」を深く個人的かつ協働的なプロジェクトとして説明し、志賀が作品を災害だけで定義されることを望んでいない点を記している。ゲッティ・アイリスは志賀を津波後のコミュニティ・アーキビストとして描き、せんだいメディアテークのrecorder311との文脈でプロジェクトを位置づける。写真が瓦礫から喪の対象・祈り・歴史的証言へと意味を変える過程が、批評的に最も有効な記述の軸となる。*3