林典子(1983年生まれ)は、キルギスの花嫁誘拐・ヤジディ教徒の祈りなど国際社会で報道されにくい問題を長期取材するドキュメンタリー写真家。2013年にVisaポール・イマージュのVisa d'Or受賞(日本人初)。個人の物語を通じて強制・ジェンダー・信仰の構造を可視化する。
1983年生まれ、東京拠点のドキュメンタリー写真家。大学で国際関係を学びながらガンビアの地方新聞で撮影を始めた。主要プロジェクトに「Unholy Matrimony——キルギスの花嫁誘拐」「Alaka-chuu」「ヤジディ教徒の祈り」がある。2013年にフランスのVisa pour l'ImageでVisa d'Or受賞(日本人初の受賞)。ワールドプレスフォトのフープ・スワルト・マスタークラス2015年選出者。NPPAフォトジャーナリズム賞・デイズジャパン国際フォトジャーナリズム賞・アレクシア財団・アムネスティ・メディア賞でも受賞実績を持つ。*1
主要なテーマは、報道されにくい社会問題、ジェンダーに基づく暴力、強制婚、難民と移住、宗教的少数者、主流ニュースメディアでは代表されにくい地域の日常生活である。ドキュメンタリー・フォトジャーナリズムの形式で、密着取材・キャプション・コミュニティへの長期滞在を通じて個人の物語から特定の社会的慣行を示す。*3 「Unholy Matrimony——キルギスの花嫁誘拐」(2012年)では農村部のキルギス社会を5か月かけて取材し、アラ・カチュー(花嫁誘拐)の慣行を撮影した。1994年から法律上は違法とされながらも地域社会での慣行が続いていたこの問題に対し、女性が結婚を受け入れるまでの説得の場面や白いスカーフという婚姻の象徴を通じて、強制の構造を個人の身体・儀礼・家族交渉の場として記録する。*4 国際関係の学知背景と初期のガンビア取材経験が、国際ニュースのアジェンダに載りにくい問題に焦点を当てる実践を形成した。2000〜2010年代のドキュメンタリー写真家が長期視覚的ストーリーテリングで人権問題を個人的細部と結びつけていた文脈に属する。*1
ビザ・プール・リマージュでのVisa d'Or受賞(同賞25年の歴史で初の日本人受賞)が最大の批評的評価となっている。Panos Picturesは林の仕事を報道されにくい問題と現実を対象とするものとして一貫して位置づける。写真の批評的な力は、強制の構造を抽象的な統計によってではなく、特定の女性・儀礼・部屋・身振り・家族の交渉によって示すことにある。*1