ポール・ジェニオー(Paul Géniaux)は、ドキュメンタリーと社会ドキュメンタリーを考えるうえで欠かせない写真家です。このページでは、ドキュメンタリーと社会ドキュメンタリーを手がかりに、写真史の流れの中での位置づけを、関連作家・運動・出典とあわせてたどります。
ポール・ジェニオー(Paul Géniaux、1873–1930)はレンヌ生まれのフランス人写真家で、小説家・詩人・画家でもあった兄シャルル(1870–1931)とともに「ジェニオー兄弟(Géniaux frères)」として活動した。ポールの写真活動は1893年頃に始まり、1898年頃に兄弟でパリに移住してからは、路地の行商人・職人・露天商・靴磨き・牛乳売りなど都市の労働者を中心に記録した*1。批評的に重要なのは、彼のスタイルがドマシーやピュヨと同じ被写体(街頭の人物)を扱いながら、ピクトリアリズムの手工芸的操作を採用せず、むしろ現実的・詩的な直接記録を志向した点である*2。またブルターニュの伝統的農漁村——亜麻・塩・スレートの収穫・加工——の記録も残しており、故郷の民俗誌的ドキュメントとして評価されている。1914年に第一次世界大戦で動員されたが、1916年に腸チフスで8か月入院し除隊となった。生前は商業的な仕事で生計を立てながら記録的な仕事を続けた写真家であり、20世紀初頭のフランスにおけるドキュメンタリー写真の展開を示す一例として参照される*3。