ピーター・ヒューゴ(Pieter Hugo)は、ポートレートと社会的写真を考えるうえで欠かせない写真家です。このページでは、ポートレートと社会的写真を手がかりに、写真史の流れの中での位置づけを、関連作家・運動・出典とあわせてたどります。
ピーター・ヒューゴ(Pieter Hugo、1976年ヨハネスブルグ生まれ)は、ケープタウンを拠点に活動する南アフリカの写真家である。主にポートレートを用い、アパルトヘイト後の南アフリカとアフリカ大陸をめぐる視線、周縁化、白人性、身体、労働、消費、暴力の記憶を扱ってきた*1。
初期の代表作には、ナイジェリアの動物使いたちを撮影した『The Hyena and Other Men』、ガーナの電子廃棄物集積地アグボグブロシーを扱った『Permanent Error』、南アフリカの家族・土地・人種的記憶をめぐる『Kin』がある*2*3。これらの作品では、被写体をドラマ化して消費する危うさと、見ることから逃げない必要性が同時に露出する。ヒューゴの写真はしばしば正面性と硬い光を用い、被写体を類型化しながらも、鑑賞者の欲望や偏見を画面へ跳ね返す構造を持つ。
2008年にアルル国際写真祭ディスカバリー賞とKLM Paul Huf Awardを受賞し、2011年にはバマコ・アフリカ写真ビエンナーレのSeydou Keita Awardを受けた。2012年にはDeutsche Börse Photography Prizeの候補となり、欧米の主要美術館・写真機関で個展と収蔵が続いている*1。写真史の座標では、アーネスト・コール以後の南アフリカ写真が、直接的な告発から、表象する側とされる側の関係そのものを問う批評的ポートレートへ拡張していく地点に置くことができる。