マーティン・パーMartin Parr

マーティン・パー(Martin Parr)は、ドキュメンタリーとニューカラーを考えるうえで欠かせない写真家です。このページでは、ドキュメンタリーとニューカラーを手がかりに、写真史の流れの中での位置づけを、関連作家・運動・出典とあわせてたどります。

基本情報
生没年 1952–

解説

1952年イングランド・サリー州生まれのパーは、マンチェスター工科大学で写真を学んだ後、北イングランドの衰退するコミュニティを撮り続け、1983〜85年の夏にマージーサイドの労働者階級が集うシーサイドリゾート・ニュー・ブライトンを取材した*1。電子フラッシュ・近接・飽和色彩によって記録した写真集『ラスト・リゾート』(1986年刊)は、サッチャー政権下の産業空洞化と格差の中で「格安リゾートに喜ぶしかない人々」を愛情と皮肉の入り混じった目線で描き、英国ドキュメンタリー写真の文法を一変させた*2。パーが変えた「文法」とは、ビル・ブラントドン・マクリンクリス・キリップらが体現してきた英国人道主義的ドキュメンタリーの慣習——モノクローム・被写体との距離を保った観察・苦境にある労働者階級への共感と連帯——のことである。その伝統では被写体は尊厳をもって、しばしば英雄的に描かれた。パーはジョエル・マイヤーウィッツウィリアム・エグルストンから学んだカラーとリングフラッシュによる近接撮影でこれを置き換え、共感の代わりに人類学的な観察眼と諷刺的な距離を持ち込んだ。批評家ゲリー・バジャーはこれを「モノクロームからカラーへの地震のような転換で、ドキュメンタリー写真の新しいトーンの発展を告げるものだった」と評した*2。1994年のマグナム入会審査ではフィリップ・ジョーンズ・グリフィスが「これは異端だ」と強く反対し、「被写体への共感というヒューマニスト的信条をパーは踏みにじっている」と主張したが、最終的に僅差の多数決で承認された*1。1990年代以降はグローバリゼーションと消費文化の均質化——世界各地のビュッフェ・土産物屋・観光客——を撮り続け、約60冊のフォトブックを刊行してフォトブック文化の普及にも尽力した*3。2015年に設立したマーティン・パー財団はブリストルを拠点として英国・アイルランド写真史のアーカイブ収集と公開に取り組む*4。2021年にCBE(コマンダー・オブ・ザ・ブリティッシュ・エンパイア)を受章し、2025年に73歳で逝去した*1。作品はテート・モダン・ポンピドゥーセンター・V&A博物館などの主要コレクションに収蔵されており、英国の日常を最も鋭く批評した写真家として国際的に位置づけられている*1。2013〜17年にはマグナム・フォトスの会長を務めた*2

マーティン・パー 写真集

The Last Resort: Photographs of New Brighton
消費社会の色彩とアイロニーを読む鍵。
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外部リンク

出典