ジェフ・ウォール
ジェフ・ウォールは、ライトボックスによる大型写真、映画的な準備、絵画史や文学の再読を通じて、写真を一瞬の記録から、出来事の見え方を組み立てる媒体へ押し広げた作家。バンクー…
シネマトグラフィック写真は、映画に似た見た目の静止画を並べる呼び名ではなく、一枚の写真が場面の前後、照明の人工性、登場人物の関係、物語の欠落をどこまで引き受けられるかをめぐる現代写真の傾向である。ジェフ・ウォールの光箱、フィリップ=ロルカ・ディコルシアの演出された街頭像、グレゴリー・クリュードソンの大規模な夜景は、それぞれ別の仕方で、静止画のうちに映画的な時間を持ち込もうとした。
静止画が映画的な時間をどう引き受けるか。前後の物語を欠いたまま、どこまで時間を感じさせられるかという問いを軸にした現代写真の傾向。
シネマトグラフィック写真が明らかにしたのは、写真の静止性は欠如ではなく想像を駆動する装置になることである。連続するショットや音がないぶん、観客は一枚の中の細部を往復しながら自分で物語を補わなければならない。