ルーカス・ブレイロック
ルーカス・ブレイロック(1978年生まれ)は、消しゴムや靴などの日常物を大判カメラで撮影し、Photoshopの加工痕をあえて残すアメリカの写真家。デジタル操作の「隠蔽」という慣習を逆転させ、加工の労働それ自体を写真の構造として可視化する。
ポストインターネットは、インターネットが目新しい技術ではなく日常の前提となった2000年代後半以降の条件に応答する実践を指す。用語はアーティストのマリサ・オルソンに始まり、ジーン・マクヒューのブログ『Post Internet』(2009)で理論化され、アーティ・ヴィアカントの論考「The Image Object Post-Internet」(2010)が中核文書となった。写真においては、画像がスクリーン・SNS・ストックデータベースを循環する流通の条件そのものが主題になる。
インターネットが目新しさではなく日常の前提となった2000年代後半以降、画像の流通・複製・変換そのものを主題とする実践。作品はオンラインとオフラインを往復し、写真とオブジェクトの境界を問う。
ポストインターネットが反転させたのは、オリジナルと流通する複製の序列である。展示のドキュメント画像・ストックイメージ・SNSの投稿が、作品そのものが生起する場になった。
ケイト・ステシウは、ストックイメージのデータベースから採取した画像をデジタル加工し、プレキシグラスや既製品と組み合わせた写真的構造物として提示する。アーティ・ヴィアカントの《Image Objects》(2011–)は、展覧会のドキュメント画像を作者自身が加工して独立した作品とすることで、物理的オブジェクトとオンライン上の複製のどちらが「本体」なのかを宙吊りにする。*1 サラ・ヴァンダービークはスタジオで組み上げたアッサンブラージュを撮影後に解体し、写真だけを唯一の痕跡として残す。物とイメージの序列の反転は、この世代に共通する方法である。
ルーカス・ブレイロックは、Photoshopの加工痕をあえて画面に残すことで、デジタル操作の労働そのものを写真の構造として可視化する。シャーロット・コットン『Photography Is Magic』(Aperture、2015)は、こうした実践を80名以上の作家とともに収録し、ポストインターネット環境における「写真的なもの」の再調整として整理した。*4
アマリア・ウルマンの《Excellences & Perfections》(2014)は、Instagram上で数か月にわたり脚本化された自己像を投稿し続けたパフォーマンスであり、SNSにおける真正性がいかに構築されるかを可視化した。作品はテート・モダン「Performing for the Camera」(2016)で展示されている。*3*5 制度的な定着の画期は北京UCCAの「Art Post-Internet」展(2014、キュレーション=カレン・アーチー/ロビン・ペッカム)で、ネットワークの中心性を前提として制作された美術を40名以上の作家で概観した。*2
「ポストインターネット」というラベル自体には作家たちの留保も少なくない。しかしこの問題系——画像の流通・変換・物質化——は、写真がプリントであると同時に画面上のファイルでもあるという現在の条件を、正面から主題化した最初の枠組みである。
隣接する系譜として、既存イメージの流用から表象の政治を問うたピクチャーズ世代、主題の序列そのものを問い直したコンセプチュアルアート、日常の事物への注視から批評性を立ち上げたスティルライフがある。画像が複製され流通することへの意識がこの系譜の分岐点であり、これらのページとあわせて読むと見取り図が立体になる。
ルーカス・ブレイロック(1978年生まれ)は、消しゴムや靴などの日常物を大判カメラで撮影し、Photoshopの加工痕をあえて残すアメリカの写真家。デジタル操作の「隠蔽」という慣習を逆転させ、加工の労働それ自体を写真の構造として可視化する。
ケイト・ステシウ(1978年生まれ)は、インターネットやストックイメージ・データベースから画像を採取し、デジタル加工・プレキシグラス・コラージュと組み合わせた写真的構造物を制作するアメリカのアーティスト。商業的画像経済と写真のオブジェクト性をめぐるポストインターネット的実践を展開する。
アーティ・ヴィアカント(1986年生まれ)は、写真・彫刻・デジタルファイル・オンライン流通を横断するアメリカのアーティスト。2011年開始の「Image Objects」シリーズで、展覧会ドキュメント画像をアーティスト自身が加工して独立した作品とし、物理的オブジェクトとその複製・流通の境界を問う。
サラ・ヴァンダービーク(1976年生まれ)は、美術史・アーカイブ・都市の断片を一時的な彫刻として組み上げ写真に収め、その後解体するアメリカのアーティスト。写真はオブジェクトの唯一の痕跡として残り、記憶・時間・場所・集合的歴史の問いを担う。
アマリア・ウルマン(1989年アルゼンチン生まれ)は、2014年にInstagramとFacebookで「Excellences & Perfections」を実施したアルゼンチン=スペインのアーティスト。脚本化された架空の自己像をSNSに投稿し続け、プラットフォームが前提とする真正性・自己ブランディングを可視化した。